恵那山

 天竜川と木曽川に挟まれた中央アルプスの最南端に、阿智村セブンサミットの恵那山・大川入山があります。また、名古屋方面から信州の方を眺めると、平野の果てに堂々とそびえているのが、この恵那山です。

 標高2191mの恵那山は、西は濃尾平野、東は伊那谷の天竜川流域から、その雄大な姿を眺められ、昔から信仰の山としてあがめられてきました。
 昔からの伝説で、天照大御神(あまてらすおおみかみ)がこの地で降誕され、胎児を包んでいた膜や胎盤などを「胞衣(褜:えな)」といいますが、その胞衣を山頂に納めたことから、恵那山と呼ばれるようになったそうです。

他にも、山の形が船底をひっくり返したような形なので、「覆船山(ふくしゅうざん)」と呼ばれたり、信州側では、「野熊山」と呼んでいました。昔、この付近の熊からは特に品質の優れた「熊の胆(い)」が取れ、古代には租税のひとつ「調」として納められたことに由来しています。

また、恵那山の北側の中央に、山肌が大きく崩れたところが見られますが、これは大御神が使った産湯を捨てたところが崩れて、ナギ(崩壊地)になったと伝えれています。赤く見えるので、「赤ナギ」と呼ばれており、このナギが明るく見えると天気は晴れ、暗いと雨降りになると言われています。

一般的には、景色のない地味な100名山と言われていますが、思いがけない箇所からの東には富士山や浅間山、西には伊勢の海や琵琶湖が見え、季節によっては樹齢100年を超えるツツジの花や紅葉の群生の間を歩いて行くことができる山です。

深田久弥も日本百名山の中で恵那山の古くからの信仰・歴史を踏まえた上で、「登山にも一種の流行のようなものがあって、どうやら恵那山は忘れられた山になっている。」という一文を残しています。大昔の中仙道(東山道)は恵那山のすぐ横の神坂峠を越えて伊那谷に出たことを想い、「昔の神坂の旅人は倦(あ)くほど恵那山を眺めながら通った。有名になったのも当然だろう。」と綴っています。

「頂上からの南アルプスの大観はすばらしかった。ずらりと白雪を輝かせて連峰が競い立っている姿は全く息を飲むような眺めであった。ウェストンの紀行では、赤石岳の南肩に富士山が覗いていることになっているが、それは見えなかった代わり、思いがけない賜物が私にあった。それはわがふるさとのやま白山が、白無垢の清浄さで遠い空に浮かんでいるのを見出したからである。・・・(中略)・・・雪を点綴した頂の長い恵那山は、まるで長城のように悠然とそびえ立っていた。」

深田久弥は、南アルプスの大観とふるさとの山、白山の清浄さを眺め、ふるさとと日本アルプスの深い思いを抱きながら、白山と富士山の間にそびえ立つ恵那山を百名山として選出したのではないでしょうか。


 コース

■一般登山者向け
恵那山広河原ルート 往路 約2時間30分・復路 約2時間
往路:昼神・月川温泉郷/園原IC・・・(車)・・・広河原ゲート→広河原登山口→恵那山山頂
復路:(往路と同じ)
■健脚登山者/1泊向け
1日目 約1時間40分 2日目 約8時間
(1日目)ヘブンスそのはら展望台→恵那山・富士見台パノラマルート→神坂峠→萬岳荘(泊)
(2日目)萬岳荘→神坂峠→鳥越峠→ウバナギ→大判山→天狗ナギ→恵那山山頂避難小屋→恵那山山頂→広河原登山口→広河原ゲート・・・(車/タクシー)・・・ヘブンスそのはら山麓駅

 


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